サラセミアは、ヘモグロビンを構成するペプチドの合成が先天的にうまく行われないため貧血になる病気で、地中海沿岸に多いので地中海貧血、地中海性貧血とも呼ばれています。

サラセミアとは、酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質のヘモグロビンを形成する4つのアミノ酸の鎖のうち1つの鎖の産生が不均衡なために生じる遺伝性疾患群です。

ヘモグロビンは、2組のペアになったグロビンの鎖からつくられいて、通常成人ではアルファ鎖が1ペアとベータ鎖が1ペアで構成されています。

時折これらの鎖のうち、1つ以上の鎖が異常になっていることがあり、サラセミアは、このように異常となったアミノ酸の鎖に基づいて分類されています。

主に次の2種類があります。

1.αサラセミア :

α鎖が正常に生成できない場合で、16番遺伝子の2箇所が原因となる。

アフリカ出身者に多く見られる。

2.βサラセミア :

β鎖が正常に生成できない場合で、11番遺伝子の1箇所が原因となる。

地中海東部の国と東南アジア出身者に多く見られる。

サラセミアの症状はいずれも同様の症状を示しますが、重症度は様々です。

アルファサラセミアマイナーとベータサラセミアマイナーでは、軽度の貧血だけで症状はありません。

アルファサラセミアメジャーでは、疲労感、息切れ、蒼白、脾腫などに加え、中等度ないし重度の貧血症状が現れます。

ベータサラセミアメジャー(ときにクーリー貧血と呼ばれます)では、重度の貧血症状が現れ、黄疸、皮膚潰瘍、胆石などもみられることがあり、脾臓が腫れることもあり、これにより膨満感や腹部不快感が引き起こされます。

骨髄の活動が過剰になり、特に頭部と顔面の骨が厚く大きくなります。

腕と脚の長管骨が弱くなり、骨折しやすくなります。

ベータサラセミアメジャーの小児は成長が遅く、思春期に達するのが正常より遅れます。

鉄の吸収量が増加する場合があることに加え、頻繁な輸血が必要になることとともに多くの鉄が供給されるため、過剰な鉄が心筋に集まって沈着し、最終的には鉄過剰症や心不全が引き起こされ、早期死亡に至る場合もあります。

※サラセミアは、欠陥遺伝子のコピーが1つの場合はサラセミアマイナー、2つの場合はサラセミアメジャーに分類されます※

サラセミアは他のヘモグロビン疾患よりも診断が難しい病気です、1滴の血液を電気泳動法で調べる検査が主流ですが、特にアルファサラセミアでは診断の確証を得にくい傾向があります。

このため、一般的診断には特殊なヘモグロビン検査と遺伝様式の判定を行う必要があります。

軽度のサラセミアの場合はほとんど治療をする必要がなくも重度のサラセミアの場合は、手術による脾臓摘出術、輸血、免疫抑制剤使用、骨髄移植が必要になります。

より重症の場合は、幹細胞移植が必要になることもあります。

正常な遺伝子を体内に導入する遺伝子治療は、現在研究段階で今のところ成功した例は報告されていません。

サラセミアはこれまで日本には稀な疾患と考えられてきていましたが、最近の調査研究で決して少なくない疾患であることが明らかにされてきました。

日本人におけるサラセミアの頻度はβサラセミアで1/1,000人、αサラセミアで1/3,500人程度で、ともに軽症型であるため、溶血性貧血の割合は少なく、特にβサラセミアでは全体の6%にしか見られない。

サラセミアの発症頻度は0.1%ほどであり、九州や西日本に多いという調査結果が得られています。


末梢血塗沫染色標本検査では、小球性低色素性貧血が認められ、赤血球の真ん中の窪みに膨らみが出来て、濃淡濃の縞模様が観察されます。

この同心円状の縞模様が標的に見える事から標的赤血球(target cell)と呼ばれています。

切手は1978年キプロス発行の「地中海性貧血症予防切手」で地中海性貧血の標的赤血球(大きく青く染まった細胞)が描かれています。

サラセミア.キプロス.1978


切手は2012年バキスタン発行の「サラセミア予防切手」で、サラセミア患者の小児に、善意の献血が行われることが描かれています。
また、右サイドには英文で『サラセミアは予防可能、それは容易です』との標語が記載されています。



サラセミア.パキスタン.2012