破傷風(Tetanus)は、破傷風菌を病原体とする人獣共通感染症のひとつで、破傷風菌が産生する神経毒によって引き起こされる急性中毒症です。
破傷風菌は世界中の土壌に広く分布していて、この菌は空気にさらされると発育できません。
従って怪我をしたときには傷口を大きく開いての洗浄や消毒など、外傷時の初期治療が重要となります。
症状としては肩こりや舌のもつれ、顔がゆがむなどで発症し、進行すると開口障害に発展し、放置すれば全身けいれんや、呼吸困難により死に至る可能性が高くなります。
死亡率は50%以上と言われています。
感染予防としては、不活性化ワクチン(破傷風トキソイド)が使用されています。
感染後の発症予防としてしワクチン(トキソイド)追加接種を行い、感染の危険性がとくに高いと判断された場合には抗破傷風免疫ヒトグロブリンを追加投与します。
『震える舌』は、三木卓(1935~)が1975年に発表した小説で、自身の娘が破傷風菌に感染した時のことをモチーフとして描いています。
これを原作として、監督:野村芳太郎、主演: 渡瀬恒彦、十朱幸代、中野良子で、1980年公開されています。
落ちていた小さな釘で手にケガをして、それが原因で破傷風菌に感染する女の子を描き、破傷風と戦う家族や医師たちがリアルに描かれています。
この映画は医療ドラマと言うよりオカルト・ホラー的趣向で制作された映画と言えます。
破傷風で起こる音や光に対する痙攣や発作が的確に描かれています。
特に破傷風に侵された少女・昌子を演じる若命真裕子の迫真の演技は素晴らしいものです。
日常生活に潜む恐怖を鋭敏な感覚で捉えた異色作品となっています。
全編に流れる芥川也寸志担当の挿入音楽で、チェロが奏でる音色が一段と映画を盛り上げています。
この映画を見たことのない方は一度見られることをお勧めします。
コメント