「古代の墓を暴くと災いが降りかかる」――そんなフィクションの怪談として語られてきた「ミイラの呪い」。しかし現代において、その正体はオカルトではなく、極めて現実的で科学的な健康リスクであることが明らかになっています。
今回は、インターネット上で密かに取引される「遺体」に潜む現代の健康脅威と、それを映し出す切手の物語を紐解きます。
1. 「呪い」の正体:休眠状態の真菌(カビ)
英スタッフォードシャー大学の研究チームが2026年8月に発表した衝撃的な報告によると、オンラインで流通しているミイラ化した人骨や動物の遺体の多くに、健康を脅かす微生物が繁殖している可能性があるといいます。調査対象となった128点の遺体のうち、実に13点から真菌(カビ)のコロニー形成を疑わせる変色が見つかりました。
ここで恐ろしいのは、数十年、あるいは数世紀にわたって休眠していた真菌の胞子が、死んでいるはずの遺体から舞い上がるという点でこれを素手で触ったり、ケースから取り出したりする際、微細な胞子を吸い込むことで以下のリスクが生じます。
◎呼吸器疾患や深刻なアレルギー反応の誘発
◎免疫機能が低下している人における日和見感染症の発症
2. 医療現場も驚く「有害物質」のレガシー
生物学的リスクに加え、化学的リスクも見逃せません。歴史的な防腐処理には、ヒ素、水銀、鉛といった猛毒が使用されてきたケースが多くあります。
博物館などの専門機関では、個人防護具(PPE)の着用や徹底した温湿度管理が義務付けられていますが、ネット市場で売買される遺体にはそうした注意書きは皆無で防護措置なしに素手で触れる行為は、専門家から見ればまさに危険そのものと言えます。
3. 無関係な第三者を巻き込む「現代の二次被害」
この問題がさらに深刻なのは、被害が購入者や販売者に留まらない点で研究を主導したカースティ・スクワイアーズ教授は、「配送業者や倉庫作業員が、中身を知らずに危険な遺体に接触している」と警鐘を鳴らしています。国際郵便の荷物の中に倫理的同意のない遺体が混じることで、物流に関わる多くの人々の健康までが危険にさらされているのです。
4.歴史と医療を伝える切手たち
古代エジプトの歴史やミイラ作りは、これまで多くの切手に刻まれてきました。
彫像の製作やピラミッド建築の様子、農耕、戦車(チャリオット)、豪華な棺、そして下段右には死者を永遠に残すためのミイラ防腐処理(ミイラ作り)を行う神官たちの姿と「アンク(生命の鍵)」が描かれています。
ギザのピラミッド群やネフェルティティ王妃の胸像とともに、右下には神官や技術者が遺体に防腐処理を施して包帯を巻くミイラ製作の作業風景がリアルに描かれています。足元にはカノポス壺も見られます。
考古学者のハワード・カーターが、古代エジプトの王ツタンカーメンの最も内側にある黄金の棺(最内棺)を詳細に調査・観察している歴史的瞬間が収められています。
最後に
古代の遺体は人類の歴史を語る貴重な財産ですが、それを個人の部屋に飾ることは、自身の健康や物流に関わる人々の安全を危険にさらす行為にほかになりません。
「ミイラの呪い」とは神の怒りではなく、私たちが現代社会で疎かにしがちな「衛生」と「倫理」に対する科学的な警告なのです。好奇心が災いとなって返ってくる「現代の呪い」に、私たちは関わらない勇気を持つべきではないでしょうか。



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