私たちの身体には、神話の英雄や神々の名前が隠されています。その中でも、特にドラマチックな役割を担っているのが、首の最も高い位置にある骨、「アトラス(第一頸椎)」です。

なぜ、私たちの首の骨に、ギリシャ神話の巨人の名が刻まれているのか。その重責と神秘に迫ってみましょう。

アトラス:頭という「世界」を支え続ける巨人

ギリシャ神話において、アトラスはゼウスとの戦いに敗れ、世界の西の果てで天空を支え続けるという過酷な罰を受けた巨人です。

医学において第一頸椎が「アトラス」と名付けられた理由は、その機能にあり私たちの頭部は、脳という知性の源と、五感を司る器官が詰まった、まさに「ひとつの世界」です。

第一頸椎は、その重い頭部を直接支え、私たちが自由に頭を動かせるようにする要(かなめ)の骨。

天を支え続ける巨人の名は、頭という「重い世界」を毎日、毎秒、休むことなく支え続けているこの小さな骨に対する、人類からの最大の敬意なのかもしれません。

切手の中のアトラス:時代を超えて語り継がれる重責

アトラスの物語は、古今東西、切手という小さな芸術の舞台でも描かれてきました。

1973年 ギリシャ発行(ギリシャ神話切手): 左に描かれた地球を抱える力強いアトラスの姿は、神話の苦悩と威厳を伝えています。


ギリシャアトラス.1973.


1906年 ギリシャ発行(オリンピック切手): 天空を支えるアトラス(左)。古代オリンピックの精神と、支えることの尊さが重なります。



アトラス.ギリシャ.1906


1949年 アルゼンチン発行(パンアメリカ地図学会議記念): 地図学の記念切手に採用されるほど、アトラスは「支えること・導くこと」の象徴として世界中で愛されています。


アトラス.アルゼンチン.1949

おわりに

私たちが何気なく首を振る時、背筋を伸ばして前を向く時、そこには第一頸椎という「アトラス」が、黙々とその責務を果たしています。

もし首に疲れを感じたら、それはあなたの首にいるアトラスが、少しだけ休息を求めているのかもしれません。

神話の巨人の物語を思い出しながら、今日一日、自分の身体を支えてくれている名もなき神に、そっと感謝を送ってみてはいかがでしょうか。