みなさん、こんにちは。
ふと見かけた欧米の献血のロゴマークや、献血推進のポスターでペリカンの親子が描かれているのを見たことはありませんか?
なぜ、優雅な水鳥であるペリカンが、命を救う医療行為のシンボルなのでしょうか。
実は、そこにはヨーロッパに古くから伝わる、「自己犠牲」と「無償の愛」の美しい伝説が隠されているのです。
今回は、史実と伝説が交差する、ペリカンと献血の不思議な関係について紐解きます。
今回は、史実と伝説が交差する、ペリカンと献血の不思議な関係について紐解きます。
1. 飢餓の雛を救う「母の愛」の伝説
中世ヨーロッパのキリスト教美術や紋章学において、非常に有名なモチーフがあります。
それが、「自らの胸を嘴(くちばし)で突き、流した血で雛を育てるペリカン」の姿です。
それが、「自らの胸を嘴(くちばし)で突き、流した血で雛を育てるペリカン」の姿です。
伝説によると、ある時、厳しい飢餓がペリカンたちを襲いました。
餌が全く見つからず、雛たちが餓死寸前になった時、母ペリカンは決断し自らの鋭い嘴で自分の胸を裂き、流れ出た血を雛たちに与えて生きながらえさせたのです。
餌が全く見つからず、雛たちが餓死寸前になった時、母ペリカンは決断し自らの鋭い嘴で自分の胸を裂き、流れ出た血を雛たちに与えて生きながらえさせたのです。
雛たちは母の血を飲んで元気を取り戻しましたが、母ペリカンは命を落としてしまいました。
もちろん、これは科学的な事実ではありません。
実際には、モモイロペリカンなどが餌を吐き戻して雛に与える際、喉元が赤く見えることや、求愛期に胸の羽毛がピンク色になることなどが、血を流しているように見えたのではないかと考えられています。
しかし、この「史実」は当時の人々には届かず、「伝説」として人々の心に深く刻まれました。
2. なぜキリスト教のシンボルになったのか?
この伝説は、中世ヨーロッパでキリスト教の教義と結びつき、爆発的に普及しました。
「十字架のキリスト」のメタファー(比喩):
自らの血を流して雛を救う姿は、人類の罪を贖うために十字架にかかり、血を流したイエス・キリストの姿と重ね合わされペリカンは「神の愛」の象徴となったのです。
「最後の晩餐」との関連:
キリスト教のミサで行われる聖体拝領(パンとワインをキリストの体と血として分かち合う儀式)の精神とも合致しました。
そのため、教会や修道院の壁画、写本、そして個人の紋章などに、このモチーフが頻繁に描かれるようになり当時のヨーロッパ人にとって、ペリカンは「究極の愛と自己犠牲」の代名詞だったのです。
3. 現代へ:献血・輸血のシンボルとして
時を経て、この伝説が持つ「尊い命を救うために自らの体の一部(血)を分け与える」という精神は、現代医療の現場へと引き継がれました。
特に欧米諸国において、ペリカンは献血や輸血事業のロゴやエンブレムとして広く使用されています。
そのことからヨーロッパの献血推進切手にはモモイロペリカンの母鳥が雛に自身の血液を与える姿が描かれています。
私たちが献血で「愛の献血」という言葉を使うことがありますが、まさにその「愛」と「自己犠牲」の精神を、ペリカンは体現しているのです。
4. 日本での展開
日本では、キリスト教文化圏のような歴史的な背景はありません。
5. 「モモイロペリカン」と呼ばれる由来と伝説
ここで、少し生物学的な側面もご紹介しましょう。
「モモイロペリカン(英語名:White pelican)」は、通常はほぼ白色ですが、繁殖期になると体色が桃色になることから名付けられました。
古代よりヨーロッパでは、このモモイロペリカンが「飢餓の時には、自分自身の血液でヒナを育てる」という伝説により、“慈愛の鳥”と称されてきました。
そのため、諸外国ではモモイロペリカンは“輸血のシンボル”、そして転じて“献血推進キャンペーンのシンボル”としても広く使用されるようになったのです。
自分自身の血液を与えてまでヒナを育てるという伝説からして、モモイロペリカンがいかにヒナを大切に育てるか想像がつくのでは。
6. 切手に描かれた「愛のペリカン」
このドラマチックな伝説は、世界中の切手デザイナーたちも魅了してきましたがここでは、その伝説や美しい姿を描いた切手をご紹介します。
まずは、母鳥がヒナに血液を与えている、まさにその光景が描かれた3枚の切手です。
モザンビーク発行(1964年)郵便税切手


ベルギー発行(1956年)赤十字付加金切手

オランダ発行(1957年)赤十字付加金切手

これらの切手は、まさに「自己犠牲の精神」を伝えるためのデザインとして発行されました。
また、伝説的な側面だけでなく、単なる鳥類としての美しい姿を描いた切手もあります。
ルーマニア発行(1965年)鳥類切手


こちらは、モモイロペリカンの優雅な姿が際立つデザインとなっています。
最後に
いかがでしたでしょうか。
公園や動物園でペリカンを見かけた時、その大きな嘴やユニークな動きの裏に、こんなにもドラマチックな伝説が隠されていることを思い出してみてください。
誰かのために自らの血を差し出す献血は、まさにこの伝説のペリカンが示した「無償の愛」そのものと言えるでしょう。
その小さな赤い一滴の血が、誰かの命を救う大きな奇跡に繋がっています。
その小さな赤い一滴の血が、誰かの命を救う大きな奇跡に繋がっています。
それでは、次回の「切手アラカルトへようこそ」もお楽しみに!

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