これまで「アキレス腱」という身体の急所、そして「ナルシシズム」という心の在り方について探求してきましたが、第3回となる今回は、現代社会で誰もが一度は経験するかもしれない心理状態「パニック(Panic)」のルーツを紐解きます。
意外にも、この言葉の背後には、大自然の中で眠る牧羊神の「平穏」という非常に興味深い物語が隠されていました。
1. 牧羊神パンが支配する「魂の恐怖」
「パニック」の語源は、ギリシャ神話に登場する牧羊神パン(Pan)にあり彼はヤギの角と脚を持つ姿で知られ、森や山野の平穏を司る神です。
しかし、パンは単なる陽気な神ではなく、彼は自身の静寂を乱されることを極端に嫌い、もし誰かがその眠りを妨げれば、相手に対して「魂を失うほどの恐怖」を植え付けると言われていました。
ギリシャの人々は、パンが一声吠えるだけで、百戦錬磨の兵士たちですら戦意を喪失して一斉に逃げ出すと信じていました。
この「理由なき突発的な恐怖」こそが、現代英語の「panic(恐慌、驚愕)」の由来であり、神がもたらす理性を失わせる力の象徴なのです。
2. 現代の医学における「パニック」
医学・心理学の視点で見ると、現代の「パニック障害」などは、脳の扁桃体などが過剰に反応し、身体が「危険がないのに危険だと誤認」して警告を発する状態です。
◎神話との共通点: 実際にはパン(神)がいるわけではありませんが、私たちが経験する「突然の動悸」や「息苦しさ」は、古代ギリシャ人が神話を通して語った「理屈を超えた恐怖」と非常に重なる感覚です。
◎古代の知恵: 古代の人々は、大自然の畏怖や理由のつかない突発的な混乱を「パンの仕業」と名付けることで、人間の制御できない感情の波を理解しようとしたのかもしれません。
3. 切手が伝える「神話の恐怖」
1958年にギリシャで発行された「神話切手」には、このパニックの語源となったパンの姿が描かれています。


図案の背景: 静かな自然の中で、いつ何時「恐怖の主」に変貌するかもしれない、パンの神秘的な側面が表現されています。
歴史の教訓: この切手を眺めると、私たちが日常的に口にする「パニック」という言葉が、数千年の歴史を持つ「人間と恐怖の物語」であることを改めて実感させられます。
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