ハレー彗星は、イギリスの天文学者エドモンド・ハレー(1656~1742)が軌道計算を初めしたことに因んで命名されました。
ハレー彗星は、75.32年周期で地球に接近する短周期彗星で、地球から肉眼で簡単に観測できます。
ハレー彗星はいつの時代も災難の前兆と見なされ、1910年に地球に大接近した際にはデマの流布や民衆のパニックが起きました。
ハレー彗星パニックとは、1910年にハレー彗星が地球に接近した際に世界中で広まった終末説やパニック現象のことです。
1910年には地球から約140万kmの距離まで接近しました。
当時は、科学技術が未発達で、彗星の正体や性質がよく分かっていなかったことから、ハレー彗星の尾に含まれる有毒ガスやチオシンが地球の大気と反応して、地球に壊滅的な被害をもたらすという説が広まりました。
この説を信じた人々は、食料や医薬品の買い占め、自殺、キリスト教徒による終末祭などの行動を起こしました。また、彗星の尾の毒性を防ぐために、マスクやガラスを身につける人々もいました。
パニックの原因は、科学技術の未発達と、当時の社会情勢が大きく影響していて1910年は、第一次世界大戦が勃発する直前であり、人々の不安や恐怖が高まっていた時期であったことまた、当時はマスコミがまだ発達しておらず、正確な情報の伝達が難しい状況であったことも相まってパニックスが引き起こされたということです。
ハレー彗星パニックは、科学技術の進歩や、マスコミの普及によって、その後は減少していきましたが、2012年に地球に接近したエイリアン・リポーター彗星や、2020年に地球に接近したNEOWISE彗星の際にも、一部でパニックが起きています。
ハレー彗星パニックは、科学や社会に対する人々の理解が深まるきっかけとなった出来事と言えるでしょう。
今回はこのことについて振り返ってみました。
1910年のハレー彗星パニック
①猛毒説
ハレー彗星が太陽面を通過する際、ハレー彗星の尾に含まれる有毒のシアン化合物成分により、地球上の生物は全て窒息死するという噂が広まりました。
②空気消滅説
ハレー彗星接近の際に、地球上の空気が5分間ほどなくなるという噂が一部で広まりました。自転車のチューブや氷ぶくろを買ってその中にためこんだ空気を吸って一時的な酸素枯渇に備える者、水を張った桶で息を止める訓練をする者、全財産を遊びにつぎ込む者、世界滅亡を憂えて自殺する者などが現れたそうです。
この話をヒントに「空気がなくなる日」という小説が生まれ、映画・ドラマ化もされました。またドラえもんの中に出てくる「ハリーのしっぽ」というお話でも、スネ夫の先祖がチューブを買い占めるというストーリーが出てきます。
③その他
海外でも、ローマ法王庁が「贖罪券」を発行したところ、希望者が殺到し、手に入れることができなかった人が悲嘆に暮れるあまり、自殺するという事件も起きたり、「彗星が持ち込むシアンの毒はこれで大丈夫」と、小麦粉を丸めただけのニセの薬を売って金もうけしようとした詐欺師がアメリカで摘発されたり、メキシコでは「処女を生贄にすれば助かる」と信じ込んだ暴徒が、女性を襲撃する事件も起きたりとにかく大混乱だったようです。
実際のハレー彗星は5月19日に太陽面を通過しましたが、彗星のガスは非常に薄いため、地球が尾の中を通過してもハレー彗星のガスは地球の厚い大気に阻まれて地表に到達することはなく、地球及び生命体には何の影響も与えませんでした。
切手は2017年北マケドニア発行の「エドモンド・ハレー没後275周年切手」で、エドモンド・ハレーの肖像とハレー彗星が描かれています。
切手は1986年南アフリカ・シスカイ発行の「ハレー彗星小型シート」で、太陽系を横切るハレー彗星が描かれています。
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