一昔前にはマッチはどこでも見ることができましたが、最近ではほとんど目にすることはありません。
マッチは1827年、イギリスの薬剤師J.ウォーカー(John Walker)が発明したフリクションライト(Friction Lights)とも呼ばれた摩擦マッチが有名です。
見かけは現在のものに近いが火つきは悪く、火がつくと飛び散り、二酸化硫黄の悪臭もするという今から見ると欠点だらけの粗悪なものでした。
この欠点を改善したのが黄リンを使っての摩擦マッチなのです。
黄りんの持つどこで擦っても発火することは便利でしたが、逆にわずかな摩擦、衝撃でも発火したり、温度上昇による自然発火が火災事故を併発したり、さらに製造中に黄りんを含む蒸気を吸い込み「リン中毒壊疽(りんちゅうどくえそ)」という職業病に冒される工員が多発し、大きな社会問題にまで発展することになります。
マッチにはリンが使用されていて、マッチが作られた初期には黄リンが使用されていましたが、黄リンは発火点が低いことに加えて毒性が強いことから、赤リンを用いた安全なマッチに変わりました。
※黄リンは淡黄色のろう状の固体で、気体や液体のリンを冷却すると得られ精製すると白色になるので白リンとも呼ばれます※
1855年、スウェーデン、イェンシェピング社のJ. E. ルンドストレーム(1815~1888)によって発火剤と燃焼剤を分離させた安全マッチ(Safety Strike on Box Match)が発明されました。
ではリンはマッチの頭薬(マッチ棒の頭の部分)に含まれているのでしょうか?
いいえここには含まれておらず側薬(マッチ箱の横に貼ってある茶色い部分)に含まれています。
※頭薬にリンが使われているという表記が時折見られますが、少なくとも20世紀半ば頃以降は軸部分にリンは含まれていません※
国内で生産されるマッチは安全マッチといわれ、日本工業規格(JIS)で品質が定められていて、毒性の強いものは現在使われていません。
頭薬は塩素酸カリウムを主成分とし、イオウ、ガラス粉、ニカワ、着色剤などが配合されて、この中で危険性があるものは、塩素酸カリウムです。
この量はマッチ20本の頭薬に0.2gぐらいですから、幼児では15本以上食べると、吐き気、腹痛、下痢を起こし、重症では腎臓の障害を起こすことがあります。
一度に15本も食べることはまずありませんが、万が一にも幼児が食べてしまったときには牛乳か水を飲ませて吐かせてから医師の診察を受けられることです。
マッチの側薬に含まれている赤リンも微量で口に入れても害はありません。
安全と言っても小さい子供さんのいる家庭では、子供さんの手の届かないところに保管しておくことです。
【おまけの話】
アンデルセンの童話の『マッチ売りの少女』が出版された1818年の7年後に安全なマッチが開発されたことからして、ここにに登場するマッチは有害な黄リンマッチということになります。
切手は1980年モナコ発行の「アンデルセン生誕175年記念切手」の中の一枚で、アンデルセンの『マッチ売りの少女』の中の一場面、大晦日の夜半寒さのため少しでも温まろうとして売り物のマッチに火を付けるマッチ売りの少女が描かれています。
切手は2005年中国発行の「アンデルセン生誕200年記念切手」の中の一枚で、アンデルセンの『マッチ売りの少女』の中の一場面、大晦日の夜半寒さのため少しでも温まろうとして売り物のマッチに火を付けるマッチ売りの少女が描かれています。

切手は2004年モナコ発行の「スウェーデン式安全マッチ開発記念切手」で、安全マッチの発明者のルンドストレームの肖像とともに安全マッチが描かれています。
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