恙虫病(ツツガムシ病)は、ツツガムシリケッチアの感染によって引き起こされる人獣共通感染症で、野ネズミなどに寄生するアカツツガムシ等のツツガムシに刺されることにより発症します。

ツツガムシに刺されてから5~14日後に、39度以上の高熱とともに、2日目ころから体幹部を中心とした全身に、2-5mmの大きさの紅斑・丘疹状の発疹が出現しますが、5日目ころには消えてしまいます。

恙虫病の主要三兆候は、刺し口・発熱・発疹は患者の90%程度にみられます。

倦怠感、頭痛、刺し口近くのリンパ節や全身のリンパ節の腫れも多く見られる症状です。

重症例では、播種性血管内凝固症候群や、多臓器不全で死亡することもあります。

早期治療が極めて重要で、本症を疑ったら直ちに治療を開始する必要があります。

抗菌薬の第1選択はテトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリン)で、クロラムフェニコール、アジスロマイシン、リファンピシンも効果があります。

ここで注意すべきは、ペニシリンをはじめとするβ-ラクタム系抗生物質は全く効き目がないことです。

診断を間違いペニシリンを使用すると、効き目が得られず死亡することがあります。

初期治療を誤ればそれが死に直結します。

適切な抗菌薬投与がなされない場合には致死率3~60%との統計がありますが、 適切な治療がなされれば、3日以内に解熱して軽快することが多い。

恙虫病に卓効を示すテトラサイクリン系の抗生物質が発見され、 日本では1950年代以降、恙虫病による死亡者は記録上ゼロになって現在に至っています。

ツツガムシ症の予防に利用可能なワクチンはなく、ダニに咬まれないようにすることが最も重要で、具体的には発生時期を知り汚染地域に立ち入らないこと、立ち入る際にはダニの咬まれにくい服装をすることです。

山歩きをするときには呉々も恙虫にご注意!!

日本国内では北海道と沖縄を除き全国に発生が見られ、日本では年間400~500例の感染報告があります。

海外では、パキスタンから南洋諸島そして、ニューギニアからオーストラリアの広い地域に渡って発生しています。

切手は1976年マレーシア発行の「医療研究所75年記念切手」で、恙虫の幼虫とその幼虫が寄生する人と野ネズミおよび治療薬のクロラムフェニコールと記載された注射器が描かれています。



ツツガムシ.マレーシア.1976


『おまけの話』

小学校唱歌『故郷(ふるさと)』の一節「恙なしや友がき」 その「つつがなし」は「ツツガムシがいない」の意味だとよく言われますが、これは間違いです。 

つつが"とは"やまい"の古い言葉で9世紀に使われ始めました。

恙虫病とツツガムシの関係が判明したのは19世紀末です。

それ故ツツガムシが「つつがなし」の語源になる事はありえません。

「恙無い(つつがない)」とは、問題がなく無事であることを表します。