イヌ鉤虫であるアンシロス・マカニナム(Ancylostoma caninum)は、人にも感染します。

イヌ鉤虫は口に鈎を持った寄生虫で、腸に鈎を引っかけて寄生します。

感染したイヌの便の中に出た卵が孵化して子虫の状態になって、子犬の口から感染、あるいは皮膚を貫通して感染することが多いです。

母犬から胎盤や母乳を介して感染した場合、生後1週間ほどしてから子犬は下痢をするようになり、急速に衰弱し、吸血による貧血でショック症状を引き起こし死亡する例も少なくありません。

離乳後の仔犬や若犬が感染すると、小腸上部からの出血ではタール便となり、下部からの出血では赤い血のついた便を排泄します。

出血することで鉄欠乏性貧血がみられることがあります。

口から入ったものはそのまま腸内で成熟し、皮膚から入ったものはいったん肺に行き、咳で出たものがまた口から入り、感染から3週後には便の中に多量の卵が排泄されます。

症状としては、消化器症状とともに出血がみられることがあります。

イヌ鉤虫に感染しているかどうかは、糞便を顕微鏡で観察して虫体を見つけます。

治療としてはフィラリア症の駆虫にも使われるミルベマイシンをはじめ、ピランテルパモ酸塩、フェバンテルなどを投与して、犬の体内から鉤虫を駆除します。

便に排泄された虫卵は1週間以内に幼虫となり、人の皮膚や毛穴から侵入し感染した場合、幼虫が皮下を移動することから一時的な皮膚炎や皮膚の痒みが引き起こされることがありますが、ヒトの体内では成虫になることが出来ずにしばらくして死滅しますから人間にはそれ以上の害を及ぼすことはありません。

切手は1975年キューバ発行の「獣医学切手」の中の一枚で、イヌに寄生するイヌ鉤虫のライフサイクルが描かれています。



イヌ鉤虫.キューバ.1975