現代医学では、外科手術後の創傷感染は皆無に等しいですが、1860年代までは化膿が細菌によって引き起こされることが知られていなかったために、大小の外科手術にかかわらず必ず起こるもので、化膿は古来より創傷治癒にとって必要不可欠なものどあるとの考え方が支配していました。

イギリスの外科医ジョゼフ・リスター(1827~1912)は、ルイ・パスツールの酵母の研究を知り、化膿が空気中の微生物によって引き起こされると考え、手術時の化膿防止の消毒法を模索していました。

1864年にカーライルという町で、下水汚物の悪臭除去と殺虫に石炭酸を利用していることを知り、手術時の創傷消毒に石炭酸を使用して、複雑骨折の手術を行い化膿が全く起こらず治癒したことを確認しました。

彼はこのことを1867年、『複雑骨折の新しい処置法』と題して医学専門雑誌に発表しました。

切手は2010年イギリス発行の「イギリス王立協会350年記念10種連刷切手」の一枚で、リスターの若かれし時の肖像と共に石炭酸の噴霧が描かれています。


リスター.イギリス.2010